「あの話題になっているアニメの原作を僕達はじつは知らない。」略して「あのアニ」。
アニメ、映画、ときには舞台、ミュージカル、展覧会……などなど、マンガだけでなく、様々なエンタメ作品を取り上げていく「このマンガがすごい!WEB」の新企画!
そう、これは「アニメを見ていると原作のマンガも読みたいような気もしてくるけれど、実際は手に取っていないアナタ」に贈る優しめのマンガガイドです。「このマンガがすごい!」ならではの視点で作品をレビュー! そしてもちろん、原作マンガやあわせて読みたいおすすめマンガ作品を紹介します!
今回紹介するのは、『高台家の人々』
「月刊YOU」に連載中の妄想炸裂ラブコメ『高台家の人々』が、綾瀬はるか主演で映画化される。
妄想が趣味の口下手で不器用なOL・平野木絵はある日、ニューヨーク支社からやってきたイケメンエリート社員・高台光正に突然食事に誘われる。社内で注目の的の王子様である光正の誘いに驚く木絵。
なぜ光正が地味女子である木絵を? ──じつは彼は人の心を読が読めるテレパス。木絵の妄想を通して、あたたかで優しい人柄に好意を抱いたからなのだ。
やがてふたりは順調に付き合いを進め、婚約することに。しかしイギリスから帰国した光正の母・由布子から「結婚はあきらめなさい」と言われてしまう……。
原作は、『このマンガがすごい!2015』オンナ編第6位に選ばれるなど、いま大人気の少女マンガだ。
木絵のへんてこな妄想シーンが、新たな魅力をもって映像化される。木絵を演じる綾瀬はるかの様々な表情が加わって、とてもキュートな作品に仕上がっている。
落ち込む表情、驚く顔、ひとりでじたばたする姿も充分かわいらしいが、時には大正時代に、時には姫と王子さまに、時にはゾンビに。おかしくてかわいらしい妄想にハートを鷲づかみにされ、「次はどんな妄想を?」と期待せずにはいられなくなる。
ああ、光正はきっとこんな気持ちなのだ。
光正役の斎藤工、茂子役の水原希子、和正役の間宮祥太朗の高台家3兄弟は並ぶと圧巻。 主演だけでなく、脇役も見逃せない。現実世界では木絵の上司だが、神父、麻薬の売人、謎の妖精など7役もの妄想内キャラクターを演じる塚地武雅は画面に登場するだけで笑いが。木絵の隣のデスクで働くOL 阿部弓子役の堀内敬子の、木絵を見守る優しいまなざし。 登場人物一人ひとりの存在が、作品をとても愛おしいものにしている。
映画では木絵と光正は「結婚とは何か」をお互い突きつけられることになる。家柄や親だけでなく、人の心が読める能力がふたりにどのような結果をもたらすか、映画を観て確かめてほしい。
『高台家の人々』の映画を観たあとは……
何を隠そう、「このマンガがすごい!WEB」は、マンガの情報サイト! そんなわけで、映画『高台家の人々』をさらに楽しみたいアナタに、読んでほしいマンガを紹介しちゃいますよっ。
『高台家の人々』森本梢子
『高台家の人々』第1巻
森本梢子 集英社 ¥400+税
(2011年10月15日発売)
著者は、『ごくせん』『デカワンコ』と、非常に著作の映像化率が高いヒットメイカー・森本梢子。
「月刊YOU」で連載中の本作は、とにかく“ギャグセンス”が光る。
とくに、木絵の妄想のなかで登場するゴブリンのような見た目のキャラクターが魅力的だ。口癖は「~でゲス」。光正に「平凡の「平」に野グソの「野」で平野でゲスよ」と木絵を紹介するなど、木絵の妄想にちょうどいいスパイスを加えている。
そのほかにも、木絵は多数の架空のキャラクターを脳内で作り出している。その個性的でかわいらしいキャラクターたちは、きっとあなたに笑いと癒しを与えてくれるはずだ。
『嘘解きレトリック』都戸利津
『嘘解きレトリック』第1巻
都戸利津 白泉社 ¥429+税
(2013年6月20日発売)
“相手の心のうちを知ってしまう能力”が作中に登場する作品といえば、本作『嘘解きレトリック』だ。
舞台は昭和初年。鹿乃子は生まれ育った村を出てたどり着いた九十九屋町で行き倒れていたところに、貧乏探偵の祝左右馬と出会う。探偵の左右馬は一見飄々としてつかみどころのない性格だが、その鋭い推理は確かなもの。「嘘を聞き分ける能力」をもつ鹿乃子と左右馬は脱・貧乏を目指して難事件解決に挑む。
謎解きや昭和初期のレトロモダンが好きな人にはたまらないマンガだ。
<文・川俣綾加>
フリーライター、福岡出身。
デザイン・マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブや、「マンガナイト」などで活動中。
著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』(岡田モフリシャス名義)。
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